『これを知らずに働けますか? 学生と考える、労働問題ソボクな疑問30』竹信 三恵子 著
ブラックバイト、セクハラ、解雇など、職場の問題は誰にでも起こる。働く権利や働き方についてのルールを知らずに、立場の強い会社に対して一介の社員が立ち向かうのは、ミサイルに素手で立ち向かうようなもの。著者が大学の講義で学生たちから受ける、一見トンデモな質問にきちんと答える。
『産婆(さんばば)フジヤン 明日を生きる力をくれる、93歳助産師一代記』坂本 フジヱ 著
現役の産婆“フジヤン” 93歳は、戦中・戦後を明るく強く、そして優しく、助産師として信念を貫き生きてきた。すべての人は、命がけでこの世に生まれてくるのだから、人生の山あり谷ありを乗り越える力がある、というフジヤンの言葉に勇気をもらえる。
『女子と貧困 乗り越え、助け合うために』雨宮 処凛 著
毎月のように電気やガス、電話が止まる経験をし、「“毎月何かを滞納して不便を強いられる生活”がどれほど私を疲弊させていたかが身に染みる」「金銭的な不安は何度も私を死にたくさせた」という著者が、貧困に対する制度上の不条理やハラスメントに直面する8人の女子からそれぞれの闘いを聞く。
『わたしも水着をきてみたい』オーサ・ストルク 作/ヒッテ・スペー 絵
主人公ファドマはソマリアからスウェーデンにきた女の子。イスラム教徒のきまりによって学校のプールには入れないが、女性だけの水泳教室に参加する。異なる慣習を尊重しながら、お互いに相手を受け入れることの大切さを伝えている。
『マンガ レインボーKids 知ってる? LGBTの友だち』手丸 かのこ 著
人と違う私は変なの?とひとり悩んでいる子へ「人の性は、みんな違って当然で、だからこそ個性的で素敵なの」という元保健室の先生の解説があたたかい。性のことを知りたい子どもだけでなく、一番の理解者になるために保護者・おとなにも読んでほしい一冊。
『少女は自転車にのって』ハイファ・アル=マンスール 監督 2012年 制作 サウジアラビア
女性が自転車に乗ることがあたりまえではない国、サウジアラビア。主人公のおてんば娘ワジダが男友達と競争するため自転車を手に入れようと奮闘する。サウジアラビアの女性監督が描く、ワジダとその母のしたたかで清新な闘いの物語。
『男女平等は進化したか 男女共同参画基本計画の策定、施策の監視から』 鹿嶋敬 著
“男女平等に向けての歩みとして、女性活躍推進はひとつのプロセスでありゴールは男女共同参画社会の形成である”と著者は述べる。女性の地位向上に力点を置いた第一次から、男性中心型労働慣行からの脱却を前面に押し出した第四次まで、男女共同参画基本計画の策定すべてにかかわった著者が、固定的性別役割分担の解消、ワークライフバランスの推進、ダイバーシティの必要性などに触れながら、この国の男女平等の進化論を語る。
『タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる』 野瀬 奈津子 著
ギータ・ウォルフとV・ギータ、ふたりの女性が1995年に創業したインドの出版社、タラブックス。企画から本の完成まで一貫した哲学を持って作られる絵本の数々は、紙から印刷、製本に至るまでの完全なハンドメイドだ。タラブックスの実践するスモールビジネスは、印刷職人や少数民族、あるいは元農家といったインド社会の弱者ともいえる人たちがのびのびと働き暮らす受け皿をつくり出している。
『宮沢賢治の真実 修羅を生きた詩人』 今野 勉 著
宮沢賢治の難解な詩「春と修羅」「マサニエロ」を解読して賢治の同性への恋情を導き出し、妹とし子の辛い恋愛を知った賢治がとし子の死後、姿なき妹を探して樺太まで旅した足跡を追って「銀河鉄道の夜」の人物像を解明する。本書は当時賢治が友人に送った膨大な手紙や数多くの記録などから、知られざる宮沢賢治像を浮き彫りにしている。
『ハイスペック女子の憂鬱』矢島 新子 著
高学歴、高キャリア、女性の社会進出の象徴「ハイスペック女子」。リーダーの重責を担うべく頑張る彼女たちは、さまざまな問題を前に立ちつくす。「昨年、社会的注目を集めた東大卒電通ウーマンの自殺はレアケースではない」と産業医の著者は言う。妥協できないキャリア女性と社会に警鐘を鳴らす書。
『死後離婚』吉川 美津子、芹沢 健介、中村 麻美 著/洋泉社
刺激的なタイトルも、紹介される実例から誰にも起こり得ることだとわかる。夫婦の一方が先に亡くなったとしても、義理の親やきょうだいとの姻族としての関係が切れるわけではなく、介護や経済的な問題も多い。実際に「死後離婚」に踏み切った体験者のインタビューや、大きな原因のひとつ“お墓の問題”にも迫る。
『時局発言! 読書の現場から』上野 千鶴子 著/WAVE出版
「社会を変える」「戦争を記憶する」「3.11以降」「格差社会の中のジェンダー」など、書評を軸に全7章からなる評論集。3.11以降の2012年から2016年までのおよそ4年間の世の中の成り行きを、同じ時代を生きる読者にとっての「いま」として、社会学者の上野千鶴子が鋭い眼力で見据える。