『明るいトランスジェンダー生活』 佐倉智美 著 トランスビュー

「トランスジェンダー」(性別違和)について著者は、「性別を越境した生活を行うこと」だと語る。幼少から「男性」という自分の性に感じていた違和感は、30歳過ぎに明確な自覚となる。生活を「女性」に変え、制度に挑戦し、「女子大生」にもなる苦労と工夫の日々をユーモラスに描く。

『未闘病記』 笙野頼子 著 講談社

たえまなく襲う激痛、全身に起きる異変が、膠原病の一種、「混合性結合組織病」と診断された著者。人によって異なる症状や劇薬による副作用から深まる孤立感など、作者の経験した感覚すべてを記録。病と闘いながらも執筆活動を続ける作者の強靭な創作意欲に脱帽する。

『解縛 しんどい親から自由になる』 小島慶子 著 新潮社

元アナウンサーで現在はタレント、エッセイストの著者は華やかな活躍の陰で長年の摂食障害や不安障害に苦しむ。治療の過程で、母親との関係を始めとした家族との葛藤が原因とかわり、その関係を「一旦諦めて」再度捉え直す作業を何年も続けた。幼少期からの赤裸々な手記とそれでも伝えたい人生への期待。

『フランスに学ぶ男女共同の子育てと少子化抑制政策』 冨士谷あつ子・伊藤公雄編著 明石書店

フランスでは、家族構造の変化や多様性に柔軟に対応できる社会を作るために、家族政策や労働政策を改革してきた結果、少子化の抑止に効果を上げている。フランスの家庭における男女がともに担う子育てからは、日本が抱える子育ての問題と私たちがフランスから学ぶべきものが浮かび上がってくる。

『パンパンとは誰なのか キャッチという占領期の性暴力とGIとの親密性』 茶園敏美著 インパクト出版社

占領期におけるGHQ主導の性病検診、キャッチという名の警察による検挙など、戦後混乱期の日本女性への性暴力問題を論じている。戦後70年を経て風化しつつある問題を、改めて広く知らせるためにも注目したい一冊。

『シャネル、革命の秘密』 リサ・チェイニー著 ディスカヴァー・トゥエンティワン

世界的なファッションブランドを築いたココ・シャネルは独創的なデザインとその革新的な生き方で、20世紀にもっとも影響を及ぼした1人となった。貧しく孤独な幼少時代を経て、モード界の革命児になったシャネルの生涯には謎が多いが、豊富な新資料に基ずく本書によって、輝かしい「シャネル神話」が、彼女の孤独との葛藤であったことがわかる。

『イスラーム世界のジェンダー秩序』 辻上奈美江著 明石書店

イスラム諸国の家族法、フェミニズム運動や、国際関係論とジェンダー視点から見る「アラブの春」とその影響を各国の歴史と詳細データで説明。

『山本美香が伝えたかったこと』 山本美香・ジャパンプレス著 山梨日日新聞社

シリア取材中に凶弾に倒れたジャーナリスト。彼女が命をかけて伝えたかった戦争や被災地の写真と記事、インタビューがまとめられている。

『日本占領とジェンダー』 平井和子著 有志舎

軍隊を維持するために「性的慰安」は本当に必要なのか?日本占領をジェンダーの視点から問い直し、「軍隊と性暴力」の問題を再考する。

『戦争と性』 マグヌス・ヒルシュフェルト著 明月堂書店

著者が主宰するベルリン性科学研究所による『世界戦争の性風俗』の日本語版。研究方法と平和を願うヒューマニズムが特徴的である。

『レイチェル・カーソン いまにに生きる言葉』 トゥーラ・カルヤライネン著 河出書房新社

『沈黙の春』で環境問題に警鐘をならしたレイチェル・カーゾン。その生涯と思想には、現代人に必要なメッセージがある。

『ムーミンの生みの親 トーベ・ヤンソン』 上遠恵子著 翔泳社

女性の地位・自立・創造性を重視し、仕事でも私生活でも女性らしさに縛られず、何よりも自由を大切にしたトーベ・ヤンソンの生き方に迫る。